先日のメリタ社の歴史に引き続き、今回はそのメリタ社が開発したコーヒーフィルター(ドリッパー)についてのお話です。
ドイツ人主婦メリタのひらめきから生まれた世界初のペーパーフィルター(ペーパードリップ)システム。
始まりは底に穴を開けただけの真鍮製カップでした。
やがて素材や形状には改良が重ねられ、抽出口も4つ穴・3つ穴など試行錯誤の結果現在の1つ穴方式に落ち着きました。
当店で扱うメリタ製品は50−60年代製の3つ穴フィルターがメイン(現在は製造されていません)。
今日はそのヴィンテージフィルターの使い方とメリタが提案する美味しいコーヒーを淹れる秘訣を、当時の説明書を元にご紹介したいと思います。
1. ローストしたての良質なコーヒー豆を買うこと
美味しいコーヒーならではの香りを存分に楽しむために必ずピュアなコーヒー豆を使うこと。
市販のコーヒーエキスや粉末コーヒーなどは加工の際に一部添加物が使われているためどうしても香ばしさに欠けてしまいます。
鮮度を保つため大量購入は避け、密閉容器に入れて保存しましょう。
挽くのはコーヒーを淹れる直前に。
挽き具合は必ず細挽きで。
*メリタの言う細挽きとは*
「親指と人差し指でつまんだ時に小麦粉のような感触」とのこと。
エスプレッソ向けの挽き具合といった感じでしょうか、かなり細かいです。
お店で挽いてもらう時にはとにかく細かく挽いてもらいましょう。
2. 淹れる杯数に合わせたフィルター&フィルターペーパーを
メリタのフィルターは約3分でコーヒーが抽出されるように設計されています(
No.100-102の場合。ホテルサイズのNo.103-106は4−7分)。
これは目的杯数に対応したフィルターを使用した場合で、サイズが合っていないと3分より早くなったり遅くなったりしてしまいます。
必ず淹れる杯数に合わせたものを選んでください。
予定時間より早く落ちてしまう原因はほかにも挽き具合が粗い・コーヒー豆が適量でない、などが考えられます。
フィルターペーパーの底部分と側面を互い違いに折ってフィルター内にセットします。
3. 1杯あたり必要なコーヒー豆はたったの5グラム
メリタ式では6杯=1リットル(1杯が約160cc)。
1杯に必要なコーヒー豆は5グラムで、No.100(1−2杯用)では5−10グラム、No.101(2−4杯用)では10−20グラムといった具合に計量もいたってシンプル。
他社製品ではコーヒーの粉がフィルターペーパーを通り越して落ちてしまうため粗めに挽いた豆が使われますが、メリタ製はどんな細かい粉もしっかりキャッチするので沈殿物のないクリアな仕上がりに。
またペーパーが苦味成分を吸収するので味が良くなるだけでなく消化にも良いといった利点も。
また同じ1杯分のコーヒーを淹れるのに、他社フィルターでは粗めに挽いたコーヒー豆7−8グラムが必要なのに対しメリタでは細挽き豆が5グラム。
つまり3割ほど少ない分量で同量のコーヒーが淹れられるのです。経済的ですね。
フィルターペーパーに適量のコーヒーを入れて表面をならし、予め温めておいたコーヒーポットの上にセットしましょう。
4. 約96度でアロマ成分を効果的に抽出
沸かし直したお湯はコーヒーをかび臭くしてしまうので、必ず毎回新鮮な水道水を沸かしてください。
(水道水でないといけないということではありません。)
塩素がきつい場合は浄水フィルターを使用すること。
塩素はコーヒーの香りを台無しにしてしまいます。
アロマ成分を存分に引き出すための最適温度は約96度。
沸騰後、ひと息おいてからコーヒー全体を濡らすように回しかけしばらくおきます。
(この時点でコーヒー豆が蒸らされているので蓋は不要)
いよいよ抽出に入るわけですがここで重要ポイント。
お湯を注ぐ時は「常に真ん中」に。
そうすることによってフィルター内全体にコーヒーが渦を巻いて拡散され、アロマ成分が抽出されるのだそうです。
「の」の字や円を描くようにといったことはせず、真ん中をめがけてフィルターの縁まで一気に注げばOK。
お湯の継ぎ足しは抽出の妨げになるので厳禁です。
抽出加減や時間はすべてフィルターがコントロール。
シンプルな形状ながら食品工学に基づいた緻密な計算がなされているんですね。
待つこと約3分。出来上がったコーヒーを一度かき混ぜて濃さを均一にしたら完成です。30分以内に飲みきってしまいましょう。
5. ペーパーフィルター式なら後片付けもラクチン
ドリップ後はフィルターペーパーをそのまま捨ててフィルター(ドリッパー)を洗い流せば片づけ完了。
ネジやパイプなどの細かい部品や濾し布もないので手軽に利用できますね。
以上メリタのコーヒーフィルター、いかがでしたか?
お湯を注ぐだけで誰でも簡単に美味しいコーヒーを淹れられるのがメリタ最大の魅力であり、これこそまさにメリタ婦人の目指したところなのではないでしょうか。
今日ご紹介したのは50年代当時のメリタ社推奨の使用方法です(今もほぼ同じです)。
コーヒーの挽き具合や分量などはお好みに合わせて調整できるので自分好みのコーヒーを追求するのも楽しいですよ。
メリタフィルターの抽出口は60年代半ばより1つ穴方式で統一されていますが、当店で取り扱うのはそれ以前に製造されたヴィンテージ3つ穴方式がメイン。
1つ穴と3つ穴、飲み比べてみるのも良いですね。
またパステルカラーなど白以外のカラー展開もこの頃で(現在陶器フィルターはホワイトのみ)、お揃いのコーヒーポットとあわせて全色集めたくなる可愛らしさです。
現在は製造されていない入手困難なメリタのヴィンテージフィルター。
今後も不定期ながら入荷に努めていきますので、興味のある方はぜひサイトをチェックしてみてください。
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